理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム 石峯 康浩(臓器全身スケールWG)
東京大学医科学研究所 浦久保 秀俊(脳神経系WG)
理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム 須永 泰弘(細胞スケールWG)
理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム 舛本 現(開発・高度化T)
理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム 三沢 計治(データ解析WG)
理化学研究所 次世代計算科学研究開発プログラム 宮下 尚之(分子スケールWG)
2011年1月6日7日両日に渡り、兵庫県神戸市にあるニチイ学館神戸ポートアイランドセンターにおいて、「次世代生命体統合シミュレーションソフトウエア研究開発(ISLiM)」生命体統合シミュレーションウィンタースクール2011が開催されました。
ISLiMは、普段は、分子スケール、細胞スケール、臓器全身スケール、データ解析融合、脳神経チーム高度化というチームから成り立っています。
ISLiMでは、創薬や治療法開発へと繋がる研究を目指し、京速コンピュータ「京」の性能をフルに発揮することで、生物の様々な時空間スケールに渡る生命科学関連の数値シミュレーションや大規模データ解析研究を行うためのソフトウエアを開発中です。
このウィンタースクールは、ISLiMのプロジェクトに参加する若手研究員が中心となり企画・運営を行い、参加者は48名でした。
開会に当たって、茅幸二プログラムディレクターからの挨拶がありました。次に、姫野龍太郎副プログラムディレクターから今後のISLiMがどう運営されていくかについての講演がありました。
次のセクションでは、高速計算の専門家からなる高度化チームから話してもらいました。似鳥啓吾さんは、長崎大学の濱田さんとともにGPUからなるコンピュータで2009年のSCのprice/performance部門で
Gordon Bell賞を受賞された時のエピソードを語ってもらいました。
大野洋介さんは、Gordon Bell賞でfinalistまで行った経験から、Gordon Bell賞の審査の過程などを解説してもらいました。また高度化チームの小山洋さんからは、「京」でハイパフォーマンスコンピューティングを行う上での厳しい意見をもらいました。
次のセクションは、参加者を4つの分科会に分けて行いました。
各分科会は、それぞれ分子動力学、血流、脳、ゲノムの4分野から最近の研究論文を選び、その論文を叩き台にしたブレインストーミングを行いました。
普段は顔合わせできないチーム間の垣根を乗り越えるため、分科会はあえて普段のチームを越えるようにメンバーを配分しました。
高性能計算という視点から活発な議論を行いました。
その後、懇親会があり、さらにポスター発表があり、全員の研究発表に触れる機会を設けることができました。議論は深夜、部屋の使用期限が切れるまで熱く続きました。
翌日、朝一番で、分科会での議論をまとめ、各々15分ほどで発表する機会が設けられました。
分子動力学分科会では、ウイルスキャプシドたんぱくを例にとり、細胞環境をできるだけ考慮したタンパク質の研究へと進むことを議論しました。
血流分科会は、血小板もシミュレーションに含めることで血栓形成をシミュレーションの主題とし、血栓形成による梗塞という結果を目指す案がありました。
脳分科会は実時間で、ネコ科の動物、たとえばライオンの挙動を操作することを考え、脳活動の多チャンネルデータの実時間処理や、ニューロンネットワークを含む内部モデルの構築とその実時間処理を議論しました。
「京」の敷地にライオンを飼う場所を探さなければならないという冗談も飛び出ました。
ゲノム分科会は、ゲノム配列解析に関して、突然変異などでゲノム配列同士の不正確な一致しか得られない場所を探すアルゴリズムを探ることなどが議論されました。
各分科会とも、計算手法については高度化チームと密接に連携するということを目指します。
最後のセクションは、ISLiMの第一走者ソフトウエアの一つとして昨年末に公開された(http://www.cafemol.org/)「生体分子粗視化シミュレーションプログラムCafeMol」について京都大学の検崎博生さんに話していただきました。
さらに、ゲノム医科学研究センターの藤本明洋さんからは、NatureGenetics誌に公表された、「超並列シークエンサーを用いた日本人ゲノム配列決定と包括的解析」というタイトルで講演いただきました。
この研究はいくつかの新聞でも取り上げられていました。
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今回のウィンタースクールでの交流が、「京」の性能を引き出し、創
薬や治療法開発へと繋がっていくことを願ってやみません。ウィンタース
クールの最後に、京速コンピュータ「京」の設備を見学させてもらいまし
た。ライオンを飼う場所はなかったようです。 |
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生命体総合シミュレーション
ウィンタースクール2011 プログラム
BioSupercomputing Newsletter Vol.4