プログラムディレクター 茅 幸二

ごあいさつ
 21世紀は「予測の時代」といわれ、その基盤を担う計算科学の重要性は世界中で指摘されています。計算科学は理論を基底としつつも、実験計測データに裏打ちされることで、実験と理論に並び、今後の科学技術の発展に欠かせないものです。
 特にスーパーコンピュータの開発と利用は国際競争力を維持する上で必要不可欠なものとして、わが国の第3期科学技術基本計画において国家基幹技術に位置づけられており、次世代スーパーコンピュータの開発利用プロジェクトが文部科学省を中心に推進されています。理化学研究所は、この「次世代スーパーコンピュータ」の設置責任機関として、この研究開発のみならず、これを基盤として計算機科学を推進する責務を負っています。
 本プロジェクトでは、世界最高水準のハードウェア開発のみならずソフトウェアに関しても最先端の研究開発に取り組むこととされており、自然現象を統合的に理解するための計算科学の研究開発と応用ソフトウェア(グランドチャレンジ・アプリケーション)の開発を通じ、次世代スーパーコンピュータを最大限活用したシミュレーションの実現を目指しています。
 特に、ライフサイエンス分野におけるグランドチャレンジについては、2006年10月より理化学研究所を中核拠点に「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」をスタートさせ、次世代スーパーコンピュータの性能を十分に引き出し、その性能を使って初めて可能となる革新的なシミュレーションを実現するべく、参加機関と密接に連携して研究開発に取り組んでいます。
 これらの取り組みを通じて、ライフサイエンスの分野に計算科学という新たな方法論を確立し、ブレークスルーをもたらす決意であります。同時に開発したソフトウェアの産業界への普及を図り、広く実社会で活用できるよう努め、次世代スーパーコンピュータ開発プロジェクトの成功に貢献して参ります。

次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発

    平成18年度から文部科学省が進める「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトでは、
     ①世界最先端・最高性能の「次世代スーパーコンピュータ」の開発・整備
     ②次世代スーパーコンピュータを最大限活用するためのソフトウェア(=グランドチャレンジアプリケーション)
     の開発・普及
     ③次世代スーパーコンピュータを中核とする世界最高水準のスーパーコンピューティング研究教育の拠点の形成
    を推進しています。

    次世代計算科学研究開発プログラムは、グランドチャレンジアプリケーションのライフサイエンス分野の研究開発拠点として、「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」の研究開発を行っています。

    分子から全身まで生体内で起こる様々な現象を統合的に理解するためのシミュレーションソフトウェアの研究開発を進めます。基礎原理に基づいて現象に迫る「解析的アプローチ」と大量の実験データから未知の経路と法則に迫る「実験データから解析へのアプローチ」によって各研究開発を統合的に進め、シミュレーションソフトウェアの開発に挑戦しています。

    本プロジェクトではライフサイエンス分野への貢献を考え、このプロジェクトにおける目標を、次の2つの観点から進めています。
     1)次世代スーパーコンピュータの完成時での利用を目指したアプリケーションソフトウェアの開発
     2)将来のライフサイエンス分野の基盤構築に向けた長期的なグランドチャレンジ
      (実験とコンピュータシミュレーションが一体となって初めて可能となる、新しい知見の獲得に向けた着実な取り組み)

研究開発体制

研究チームリーダー