(Updated on 2013/2/13)
項番:O-1
開発責任者
理化学研究所臓器全身スケール研究開発チーム
チームリーダー 高木周
概要
構造と流体の連成解析を行う。医療応用に向け、やわらかな人体の解析および予測を行う。
離散化(計算モデル化)の方法
- 有限差分法。固体と流体は密度関数(VOFと同意)を用いて区別。
- 固体と流体は応力項の記述の違い。両者とも非圧縮性。
計算方法
SMAC法、4-Color SOR
並列化の方法
領域分割法
開発言語とライブラリ
FORTRAN90, C++, MPI, OpenMP, SPHERE
コードの公開状況
ソース・コードをISLiMダウンロードサイトから公開済み
現状での計算規模
- ボクセル数:960x960x960 (884,736,000要素)
- 8192コア、メモリ容量 400GB、ディスク容量 8TB
次世代機「京」での計算規模
- ボクセル数: 40000x4000x4000 (6400億要素)
- MRI画像等から生成した実証実験データの血流解析を高い精度で実施
- メモリ容量 300TB、ディスク容量 6PB
血管等の物性を考慮した全身血流シミュレーション
どんなことができるか
- 大きな血管から毛細血管までの赤血球・血小板を入れた計算を行うことができる。
- 医療データ(CTスキャン、MRI等)から直接シミュレーションを行うことができ、個人毎の診断に即応してシミュレーションを行うことができる
項番:O-2/ PHITS-K(開発コード名 ZZ-DOSE)
開発責任者
理化学研究所臓器全身スケール研究開発チーム
石川 顕一(東京大学大学院工学研究科特任准教授)
概要
治療用重粒子線による人体中の空間線量分布を、ボクセルデータに対してモンテカルロ法を用いて計算する。新開発の領域分割モンテカルロ法を用いることで、巨大なボクセルデータの取り扱いを可能にしている。
離散化(計算モデル化)の方法
領域分割
計算方法:モンテカルロ法
並列化の方法
領域分割によるヒストリー並列
開発言語とライブラリ
FORTRAN77, Fortran90, MPI
コードの公開状況
ソース・コードを公開済み。ISLiMダウンロードサイト経由で入手可能。
現状での計算規模
- 人体ボクセルファントム中での線量分布
- 最大で502×234×860ボクセル(全体計算)
- QUEST/RICCの1024コアを使用
次世代機「京」での計算規模
- 0.3ミリ角の全身ボクセルファントム
- 1640×890×5630ボクセル
- 64万コアを使用
人体ボクセルファントムに対して計算した全身物理線量。エネルギー140 MeV/uの炭素ビームが肺に入射した場合を仮定。(a)すべての粒子の寄与 (b)イオン化の寄与 (c)中性子の寄与。カラーバーは対数スケール。
どんなことができるか
- 詳細な空間線量分布を、組織不均一性の大きい部位でも正確に計算できる。
- 線量に占める様々な線種(イオン種、中性子、光子など)の寄与を分けて計算できる。生物効果や、二次的なガンのリスク評価に有用と期待される。
項番:O-3
開発責任者
日本大学生産工学部機械工学科准教授 沖田浩平
概要
超音波を集束させ,焦点で加熱によって腫瘍を焼灼する治療法(High Intensity Focused Ultrasound : HIFU)において,治療機器から照射された超音波が体内を伝播する過程をシミュレーションするためのアプリケーション
離散化(計算モデル化)の方法
多成分からなる媒質中の音波の伝播に対する基礎式を空間n次,時間2次精度の有限差分法によって離散化
計算方法
FDTD法
並列化の方法
領域分割とループ分割によるハイブリッド並列
開発言語とライブラリ
Fortran90, C++, MPI, OpenMP, SPHERE
コードの公開状況
ソース・コードをISLiMダウンロードサイトから公開済み
現状での計算規模
- 格子点数:1400×1200×1200(2,016,000,000点)
- 並列数 256-8000 コア
- メモリ容量 484 GB,ディスク容量 1.5 TB
次世代機「京」での計算規模
- 格子点数:1.28-4.32兆点
- 並列数 64 万コア
- メモリ容量 31-103 TB,ディスク容量 90-300T B
頭蓋骨越しのHIFU照射シミュレーションの例
どんなことができるか
- 医療画像から作成されたボクセル人体モデルを利用した生体内超音波伝播シミュレーションによる治療部位の予測
- 治療機器による焦点制御が困難な体深部の腫瘍治療において,シミュレーションを援用した高精度な焦点制御
- 治療機器の設計および認可に向けた臨床試験における安全性の検討
- 各個人の体型に対応したシミュレーションによる術前の治療計画の検討
項番:O-4
開発責任者
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 久田俊明
概要
内部構造まで再現した心筋細胞モデル(ミクロモデル)を心臓モデル(マクロモデル)の各有限要素に割り当て、均質化法に基づき両者を連成させ同時に解く。
離散化(計算モデル化)の方法
有限要素法
計算方法
反復法/直接法による疎行列連立方程式求解
並列化の方法
ハイブリッド並列/フラットMPI並列
開発言語とライブラリ
FORTRAN 90, MPI, Open MP
コードの公開状況
非公開。利用は要相談。
現状での計算規模
- 約26,000自由度/細胞 x 8000細胞
- 8000+要素からなる両心室マクロモデル
- PCクラスタで8000コア並列
- メモリ容量 4GB x 1000,ディスク容量 10~100 GB
次世代機「京」での計算規模
- 約20万自由度/細胞 x 64万細胞
- 64万+要素からなる全心臓モデル
- 64万コア並列
- メモリ容量 16GB x 8万,ディスク容量 3GB x 8万
ミクロ事象から心臓の拍動・血液拍出を再現するUT-Heart
どんなことができるか
- 精密なメッシュによる実用規模の全心臓マルチスケール解析を理想値に近いスケーラビリティで実行可能。
- 東大附属病院を中心に実データに基づく多角的な検証作業が進行中であり、臨床応用に向けて準備を進めている。
- マクロ心臓モデルによるシミュレータは既に植え込み型除細動装置の設計の実用に供され成果を挙げている。
- 細胞を構成する各種機能タンパクやイオンチャネルなどミクロの異常と、肥大型心筋症、QT延長症候群など各種心臓疾患(マクロ)の関係を明らかに出来る可能性がある。